みみみ@読書好き理系社会人の日記

しがないコロナ世代の会社員の日常です。転職経験あり。

「傲慢と善良」読後感想

 こんにちは。

 

 個人的にここ最近ビジネス書とか専門書関連ばかり読んでいたんですが、資格試験とか色々落ち着いてきて、まとまった時間が取れるようになってきたので久々に小説を読みました。

 

 今回読んだ小説が辻村深月さんの「傲慢と善良」です。なんとなく表紙に惹かれて表紙買いしました。備忘録がてら感想を書きます(※感想にはネタバレを含みます)。

 この小説ではタイトルの通り「傲慢さ」と「善良さ」(特に「傲慢さ」)についてかなり刺さる辛辣な記載が多くあるので、主には刺さった内容を書こうと思います。

 

 

内容とあらすじ

 ほんとに事前情報なしで表紙買いしたので何のテーマなのか知らずに買ったんですが、主な話の流れとしては婚活がテーマでした。

 自分は学生の時に出会った人と結婚しましたが、身の回りには20~30代の婚活中の知り合いがいるのでちょっと興味のあるテーマです。

 

 あらすじとしては、主人公の男女(女:真実、男:架)が婚活で出会い、結婚式の予約もしていたところで女性が姿を消してしまい、男性は女性がかつて相談したストーカーがさらったのではないかと疑い、女性の姉や両親やかつての勤務先の同僚や以前の婚活相手や結婚相談所へ赴いて情報を探し、その中で自分や相手女性の「傲慢」や「善良」に気づくという感じの話です。

 かなりざっくりです。

 

内容への感想

確かに結婚が遅い人に傲慢さを感じたことがある

 私の年齢では結婚していないことはまだあまり珍しいことでもないですが、今の時点でも彼氏彼女ができたことがないという人は私の身の回りでは少ないですが何人かいて、且つ少しの傲慢さを抱えているように思っていました。

 そういう人たちが共通して言うのは、「いい人がいない」です。

 

 「いい人がいない」というのは、いい人がいたら付き合えたのにというニュアンスが匂う言葉なんですよね。そう思うとめちゃくちゃ傲慢ですね。

 あと同様に「コロナじゃなかったら」「街コンとかに行けたら」みたいなこともよく言ってる気がします。

 

 さらにいうと本書で書かれている通り、その人たちにとってのいい人、結婚とか付き合うということを考えられるような「ピンとくる人」は、つまりは「自分のレベルに見合う人」という意味に言い換えられます。

 

 本書では恋愛経験がない人は自己愛が強くなっていって、自分が定める自分のレベルが高くなりすぎるが故に「自分に見合う人」がいないみたいなことが言われています。

 これについて、明記はされていなかったかもしれませんが、人と付き合ったことがない人は自分のレベルを測ったことがない(測るチャンスがない)ということもあると思います。

 

 自分の年収は自分の周りにいる5人くらいの人の年収の平均くらい、みたいな話を聞いたことがある気がしますが、それと少し近くて、いくつかの恋愛経験を積んだ人は自分が付き合った人たちの平均くらいが自分自身の客観的なレベルというように考えられるのかもしれませんね。

 

婚活がうまくいくのはビジョンがある人

 ビジネスとかではよく成功するにはビジョンが必要みたいなことを言いますが、こと婚活の内容でビジョンが出てくると思わなくて、最初はちょっと大袈裟な〜と思っていました。

 

 小説の中では、そもそも自分で考えて結婚しようと決めるのではなくて親や周りに言われたり自分の年齢的にそろそろ結婚するべきだから、というような理由で婚活を始める人がいるというような記載があります。

 さらには、独身でいる or 結婚する ということを自分で選ぶ意思さえない人が親の主導で婚活を進めるみたいな記載もあります。

 

 正直、私としては理解ができない価値観でした。

 私は自分の意思で決められる環境で、自分の意思で就職して結婚して転職もして、というように自分でいくつかの重要な選択をしてきた自負があるのでそう思うのかもしれませんが、そのように自分で決めることすらできないような環境に幼少期から置かれたりというような育ち方をするともしかしたらそうなるのかなあとふんわり思いました。

 

自分より下な時点でどれも同じ

 これはドキッとしました。自分もそう思っています。

 

 例えば自分にとって他人の学歴なんて非常に興味がないし、あっても海外の大学院出てるとかかなと思いますが、それってちょっと傲慢なところありますよね。

 年収も自分より低いと特に興味ないです。

 

 そして、例えば地元じゃ有名な〇〇大出身みたいなことを鼻にかけて、全くそれに興味がない地元外の人間とかに自慢してかかるような態度も同様に傲慢ですね。

 

 ただこれについてはこの傲慢さを持っていることが問題ではなくて、単純に自分と他人の世界で何が優位なステータスになるかが異なることを自覚して他人に押し付けないということに勝ることはないように思います。

 

小説としての感想

真実の幼さを感じる

 小説の中で、しばらく文章が進んでから初めて主人公の男女の年齢が出てきますが、そこで私は驚きました。

「え、真実35歳…?年齢にしては幼すぎない?」というところ。

 具体的には、恋人に対して君付けで呼ぶところや、恋人に対して強く自分の要求を口にするのが初めてという記載からかなり控えめな若い女性なんだろうなという勝手な人物像を描いていました。

 

 読み進めていくと、田舎の両親の元で両親が決めたレールの上で30歳まで過ごした、あまり自分の意思がない女性という人物像と一致しました。

 あまり自分の周りにはいないタイプです。

 他に主人公の男性の男友達として出てくる女性とはかなり成熟度が異なるのを推察できる文章だなと思いました。

 

女性視点の時だけ男性に対する印象に「頭が良くて…」入りがち

 前に読んだ、「彼女は頭が悪いから」とも少し共通するんですが、

techtechbafl.hatenadiary.jp

なんとなく、女性目線で恋愛対象として男性を見るシーンにおいてやたらと「この人は頭が良さそう」みたいな項目が入るのが個人的にすごく謎です。

 

 男性目線で女性に対しての「この人は頭が良さそう」みたいな描写って、たまには出てくるもののあんまり見ないように思います。

 

 今回の小説と「彼女は頭が悪いから」の女性だと、小説の中において男性に対して多少上に見ている、自分のことを少し下に思っている人だからなのかもしれないですが。

 実際に周りの女友達と話していて、「あの男性はとても頭が良さそうで(恋愛対象として)好ましい」みたいな話をしたことがないので、恋愛対象として見る視点でこれって本当に必要なファクターなんだろうか…と若干モヤっとしました。

 

まとめ

 「傲慢と善良」かなり読みやすくて面白い小説でした。面白いだけではなくて、ところどころ現実の自分に刺さる部分が特に良いです。

 

 それにしても久しぶりに感想文を書いたらかなり散文になってしまいました。

 継続的にブログを書いていくことで文章力が上がると良いな…。では。